中学生のときからわたしを好きだった男

ある男から突然、手紙が送られてきた。誰だかわからなかったが、中学のときの同窓生だということだった。


その彼の話によると、中学生のときから、わたしのことを好きだったらしい。卒業してから一度も会ったことはないので、その男の記憶のなかにわたしがずっと存在し続けたようだ。もっとも、わたしの知らないところでわたしの姿をどこかでそっと見つめていた可能性はあるけどね。


というか、わたしが中学生のときでさえ、彼の存在を認知していなかったので、ものすごく長い間、彼はわたしに片思いを続けていたのでしょうね。中学生のころ、多くの男子生徒がわたしに好意を寄せていたのは自分でも覚えている。ただ、わたしはどの男の子とも1対1の恋愛関係になることはなかった。


そのぐらいの年齢だと、男も成長に差があるので、わたしにちゃんと告白してくる男の子もいたけど、勇気がなくて、わたしのことを考えながらオナニーしているだけの男の子が大部分だったみたいだ。学校だから、いわゆる行事で写された写真にはわたしも写っている。それを見ながら、わたしとのセックスを空想する男の子が多かったのでしょうね。


ところで、さっきの手紙を書いてきた彼は、ずっとわたしのことを思い続けてきたのだという。どういう男か分からなかったので、卒業アルバムを一応チェックしてみたら、なんか地味そうな男の子だった。この男の子の頭の中(といっても今は大人になっているはずだけど)をずっとわたしが支配していたのだと思うと、なんだかかわいそうにも思えたが、別にわたしが悪いことをしたわけではない。一方的にこの男がわたしに魅了されていただけだ。


それにしてもこんなに長い間、一回も会うこともなく、わたしのことが好きだったなんて、哀れにすら感じる。当然、他の女とも付き合ったことがないのだという。きっと、卒業写真のわたしをみながら、何年も何年もわたしでオナニーしていたのでしょうね。


ところで、彼は手紙で何て書いてきたかというと、どんなにあきらめようとしてもどうしてもわたしのことがあきらめきれないのだという。ただ、もうわたしのことをあきらめたい。わたしと交際することはあきらめるので、せめて一回だけでもわたしのからだを抱きしめさせてくれないか、というのだ。そうすれば、呪縛から逃れられるような気がするという。服を着たままでもよいので、1回だけでもわたしのことを抱きしめさせてくれれば、すべてを思い出に変えられるという。


わたしはこんな願いに応じるつもりはないし、当然、返事を出すことはない。わたしのことをあきらめたいのなら、自分でなんとかするのね。それにしても、わたしと同じ年になって、いまだにわたしのことを思いながらオナニーしているなんて、男って、なんて過去の思い出が長持ちする動物なのかと思う。