こそこそして動揺する男

 前に振ってあげた男にどこかで偶然に出くわすことがある。振るといっても色々なパターンがある。しばらく付き合ってあげて、セックスまでさせてあげた男を切る場合。少しだけ親しくしてあげた男が、一方的にわたしに恋愛感情を持つようになって、わたしと男女の付き合いができるのではないかと勘違いしたため、夢から覚めさせてあげる場合。わたしに一目ぼれした男が、自分の想いを告白してきたけど、早めに断ってあげた場合。今まで実に色々なケースがあった。


昨日、偶然に町ですれ違った男は、2番目のケースの男だった。少し仲良くしてあげただけなのに、わたしと付き合って欲しいなどと告白してきたので、その男とは徹底的に距離を置き、無視してあげた。男はちゃんとした返事が欲しいみたいだったけど、無視するということは、まったくその男には興味がないし、付き合ってあげるつもりもないというサインなのは誰だって分かりそうなものだと思う。


だけど、その男からみれば、自分の告白がちゃんと断られたわけではないため、わたしと付き合うことができるかもしれないという幻想をまだ捨て切れていないみたいだった。


昨日その男にすれ違ったとき、一瞬だけ目が合ってしまったが、まるで汚いものを見てしまったかのようにすぐに目を背け、無視してあげた。男はわたしの顔を見て動揺してしまったようだ。きまりが悪いのか、男もわたしのことを必死に無視しかえそうとしていた。本当は無視するどころかわたしのことがなんとしてでも欲しいくせに。自分の心を偽るのってつらいんでしょうね。