もったいない

男の優越感と悲壮感って紙一重なのだと思う。


ちょっとだけだけど、気を引いてみたい男がいた。いつもはそういうことはしないのだけれど、わたしのほうからいろいろとわたしとふたりきりになる機会を作ってあげた。たぶん、わたしが彼に気があるということを感じ取ったのだろう。彼のほうもわたしのことを積極的に誘ってくるようになった。男ってけっこう計算高いところがある。この女だったらどこまで付き合おうとか、どうしようとか、いろいろ考えているみたいね。


これは推測なんだけれど、最初は彼はわたしのことをそんなにタイプだとは思っていなかったみたい。でも、わたしの誘いを断ることはなかった。わたしの誘いを断るのはもったいないと考えていたみたいね。恋愛にもったいないもなにもないと思うのだけれど、そう考える男って実に多いのだ。


そう考えていると、なんとなく彼に醒めてしまった。でも、今度は逆に彼がわたしに夢中になってきてしまった。最初はわたしと付き合えることで優越感を持っていたのでしょうね。わたしが彼と会うのを面倒に思い始めると、なんだか急にわたしのことを独占したくなってしまったみたい。


そうすると彼の顔には悲壮感が表れ始めた。わたしが他の男といると嫉妬をするようになり、必要以上にわたしのからだに触れている時間が長くなった。きっと、わたしを他の男に取られたくないとでも思っているのでしょう。


何かにつけてわたしのからだを触りたがる男。からだに接触していれば、わたしのこころが離れていかないとでも思っているのかもしれない。いくらからだをだきしめても、こころまで縛ることはできないのにね。