わたしの口の動きを見て欲情する男たち

律儀に「キスさせてください」なんてお願いをしてくる男って少なくないのよね。キスなんてタイミングなんだから、相手の雰囲気をみていれば、わたしがキスさせてあげるか、それとも拒絶するかなんてわかりそうなものなのに。


キスさせてあげるのが嫌なときは、男が傷つかないように、「そんなことをしたら、今までの関係じゃいられなくなっちゃう」みたいなことを言ってあげて、さりげなく断るようにしてあげている。わたしはきちんと相手は選んでいる。わたしは自分の体に触れさせてあげてもいいと思った男にしか体を触らせないようにしている。それが体の一部であったとしてもだ。


ある男が食事を誘ってきたので、一緒に食事をつきあってあげたことがある。その男は、わたしの唇をみながら、もの欲しそうにしている。ある種の男にとって、女の口の動きって、何だか興奮させる要素があるみたい。わたしが飲み物のグラスに口を付けると、男はグラスに付いたわたしの唇の跡を見つめる。


わたしのことを考え過ぎて、なんとなくおかしくなってしまったみたいな男だと思ったので、食事を済ませたあとは、そのままサヨナラして、それ以来、二人だけでは会ってあげていない。


わたしがグラスに口を付けるように、その男もわたしに口づけをして欲しかったのだろう。わたしがフォークを口に入れるように、その男も自分のペニスをわたしの口に入れたかったのだろう。でも、その男には、わたしの体には指一本触れさせてあげようとは思わなかった。だって、好きでも嫌いでもなかったからだ。

わたしに求愛してくる男なんてたくさんいるのだから、別にどうでもいい男の欲望を満たしてあげる必要はない。